あまがさの日記のようなもの

書きたい時に書く日記のようなブログです。

📚 鶴見 済『完全自殺マニュアル』

昨日手に入れたこの本を企業説明会の帰りの電車で読み耽り、先程読み終えました。

読んでいて思ったのは、ただただ面白いということです。ページをめくる手が止まりませんでした。

大事なことなので早めに書きますが、この本を読んで「死のう」とは思いませんでした。むしろあんなに嫌だった就活に前向きに取り組もうかなとすら思えました。

この本は「いつでも死ねる安心感」を読者に提供しています。

例えるならば宝くじ。仮に私が社会人一年目で一生遊んで暮らせるだけの宝くじが当たっても会社を辞めません。

「いつでも会社を辞められる」と思いながら適度に力を抜いて、心に余裕がある状態で働きます。

本当に気に食わないことがあれば辞めてしまえば良いし、転職も急がなくて良いし、週二でアルバイトをして生活しても良いし、遊んで暮らしても良い。その余裕こそが幸せな生活に必要だと思うんです。

この「完全自殺マニュアル」は読者をその状態にしてくれます。

「いざとなればどうにかなるからやってみようかな」「本当に無理になったら諦めるし今だけ挑戦してみようかな」と前向きな気持ちにさせてくれるんです。

題名だけを見て、自殺希望者が読む本だと思われるのは癪です。読み物としても本当に面白い。

ミステリー、ホラー小説を読む時の参考にもなりますし、創作活動をしている人にとっては良い資料になると思います。

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↑↓ミュシャ展のポスターでブックカバーを折ってみました。裏表とも素敵です。

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↓カバーをかける前はこんな感じ。カバー無しでは読めないです。

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そして作者の鶴見 済先生は説明がとてもわかり易いですし、何よりも言葉選びが素晴らしいです。

私は元々自殺肯定派なのですが、世間の目もあり口に出すことは出来ません。思っていても言わない様に気をつけて生きてきました。

ですがこの本では当たり前に自殺を肯定し、未遂の事例を挙げて「失敗」「死ねなかった」「不運にも助かってしまった」等と書かれています。

自殺に失敗した場合、後遺症が残ること、又「あいつ自殺しようとしたらしいよ」と噂をされ虐められる等、その後待ち受ける地獄について触れていたところも信用出来ました。

この手のものは「生きていれば良いことがある」「もう少しの辛抱」等と、死にたいと考える程に追い詰められた人間にとどめを刺すような事ばかり書いていることが多いです。

「自殺を止める自分優しい」と気持ちよくなっている人が世の中には沢山いて、その人たちは、辛い思いをしている人に対して解決出来る力も持たないばかりか、具体的な解決策も出さず、「死ぬのは良くないことだ」と引き止める自分に酔いしれています。

追い詰められた人を使って自慰をしているようなものです。不愉快極まりないです。

(勿論そうでは無い人もいます)

例えば借金に苦しみ自殺をはかる人に「生きていれば何とかなるよ」と言う。何とかなるなら、死のうとは思わないのです。自分の考えうる全てを試した結果ダメだったり、自分の命を犠牲にした方が楽だと本人が判断したから死ぬのです。

その言葉を発する人は代わりに借金を背負えますか?背負えないですよね。借金が返せるだけの仕事を紹介できますか?自己破産出来ない環境にあるのかもしれないし、もしかすると自己破産してもどうにもならない状態なのかもしれない。

何か解決策をその人に伝えられるわけでもないのに、折角覚悟をしたのに、漸く苦しみから解放されると思ったのに、これ以上の地獄を味合わせようとする人は悪魔か何かですか?

明日良いことがある「かもしれない」では足りないんです。今辛いからこの苦しみから解放されたい。それだけです。

実際にいじめを苦に自殺未遂をした少年が、自殺をはかったことがクラスメイトにバレてしまい、より一層いじめが加速し絶望、もう一度自殺をはかり、亡くなったという話もありました。

その件について著者は「一回目で死ねた方がましだった」と話しており、心の底から同意しましたし、全体を通して万が一にも助からないように細かにアドバイスをしてくれているのがとても親切で好感を持ちました。

完全自殺マニュアル」は、苦しみ抜いた自殺志望者の感情を無視せず、向き合い、こんな方法があるよと選択肢を与えることで、自殺志望者の心にゆとりを与えてくれています。

しかし批判の声も多いようです。読んでから批判するならまだしも、読まずしてどうして批判できようか。

なぜベストセラーになったのか考えてみれば分かることです。1993年に出た本が2021年現在でも売られていて117刷もしている事実。「完全自殺マニュアル」がそれだけ魅力的で愛されているからでしょう。

この本を読んで自殺した人がいる、という批判もあるようですが…この本を読んで自殺した?人間を舐めるのもいい加減にしてください。

自殺をする人は本を読もうが読まなかろうが死にます。批判するあなたは読みました?読んだ結果自殺したんですか?生きてますよね?

自殺した人は自殺をするだけの理由があったから自殺したんです。その人の意志を無視して本のせいにするなんて死んだその人に失礼ではありませんか?

確かに後押しにはなるかもしれませんよ。どうやったら死ねるのかわからなかった人が知識を得たことで自殺したかもしれない。

でも「本のせいで」自殺した訳では無いですよね。日本に銃があったらきっとその人は既に死んでいました。

それだけの事です。本人が本人の意思でした事を、他の要素のせいにするのは本人に失礼です。死ぬほど思い詰められていたのに、その苦しみはどこに行ってしまうのか。

読んで批判したならもう価値観の違いなので仕方ないと思うのですが、読まずに批判はなぁ…せめて本を読んでから批判しておくれ、そう思うばかりです。

1日も掛からず読み終えた「完全自殺マニュアル」は私に前向きな気持ちを思い出させてくれました。

この本をお守り代わりにもう少し頑張ってみようかな。諦めるにはまだ早い気がしてきた。

手に入らないから欲しい、逃げるから追う、人間の欲求って多分そういうものなんです。

この本を読んで、死が簡単に手に入るものになりました、今までよりずっと身近になったんです。だからまだいいやって。

この心のゆとりを1200円で買えるなら安いものですね。

総合して、とても良い本でした。一家に一冊…とはいきませんが興味のある方には読み物としてとても面白いのでオススメです。

グロテスクな表現が含まれますので苦手な方はお気をつけ下さいね。

最後に、自殺肯定派の私がもし大切な人に「死にたい」と相談されたらどうするかを書いておきます。

私の場合は、じっくり話しを聞き、共感し、理解を示します。

もし仕事がないならば一緒にハローワークに行きます。もし借金があるならば借金額を聞き返済にどれだけかかるのか、どうすれば良いのか考えます。もし恋人と別れたならば良い人を探せるように協力します。

私にできることを事前に伝えます。

そして最後に「私は貴方が死んだら悲しいよ」と伝えます。

それでも止まらぬなら仕方がないことです。私にそれ以上のことはできません。死なないで、と言えるだけの力を私は持たないので。

一生大切な人を失った悲しみを抱いて生きていくことになりますが、やれることはやったならば仕方がないでしょう。

大切に思う人の意志を最後まで尊重できる人間でありたいと私は思います。

以上!

元気になった雨傘、就活頑張ります!

ここまで読んで下さりありがとうございました♡