あまがさの日記のようなもの

書きたい時に書く日記のようなブログです。

耳を洗う

閲覧注意、恋愛に憧れのある人、私のことが好きな人は読まないで下さい。

ブログを書こうと思うも何も思いつかなくて、今週のお題を見たら「最近洗ったもの」とある。なるほど、耳だ、これしかない。

初めから事情を話すなら、先月頭、親しい友人とカラオケで飲んだ。

広くて暗いカラオケボックスのソファーに横になり、私達はお酒を飲みながらダラダラと話をしていた。

仕事が忙しくて昼食を抜いていた上に、おつまみなんてほぼ無かったので急速に酔いがまわった。

横になっていたことやソフトドリンクがなかったことも原因の1つだろう。

天井を見上げながら酒を煽り、数ヶ月前から始まった労働を嘆いていたはずだった。

体格がいいからスーツが似合うね、なんて見慣れない姿を褒めたりして、だらだら、ごろごろとお互いの近況報告。

私が焼き鳥を食べようとした時には何故か友人は隣に座っていて、私に酒を注いできた。

「酒薄くね?全然飲んでないじゃん」

そうかな?カクテルだからジュースみたいな感じだよ、結構飲んでるからもう要らないや、こいつも酔ってんのかな、なんて。

しばらくダラダラ会話をしていた、距離は近かったけれど友人間だしこんなもんか、と許せるギリギリ。

寄りかかってきたら重すぎて支えられない。酔すぎだよーと笑っていたら引き寄せられた。

寂しいのかな、ストレス?よく分かんないけどそゆこともあるんだなーと思いながらやんわり腕の隙間から抜け出して、距離をとって座ったのに、わざわざこっちにまで来てくっついてくるから何なのだろうと、ふわふわした脳みそで考えていた。

本格的に酔いが回ってきて、喉が渇くなと思っていたら「水だよ」とコップに透明な液体。一口飲んで渡してきたから油断した。

ごくごくと飲んで、あれ、目の前の景色が歪んで回る。コップを落とす、と思った瞬間に取り上げられて気付いた。

酷い、何するんだ、水じゃないじゃん。一気に飲みすぎた。

「美味しい?」

美味しいけど、そうじゃないだろ、なんてもう声にならなくて、身体の力が完全に抜けた。

カラオケの椅子から滑り落ちる私を抱き抱えて満足気に座る友人。

その時の私はなんて酷いやつだ!と憤慨していたのだけれどあんなに弱い抵抗じゃ、どうにもならないよね。

あーあ、長きに渡る友情の終わりはこんな形なのかと絶望した。

しょんぼりして、本当に酷い、お水が飲みたい、と訴えて、渡されたコップを傾けて、やっぱり入ってるのは酒だった。

最低だな、友よ。お前は最低な男だよ、ほんとに。

ソファーに横たえられて顔をのぞき込まれたがもう焦点は合わなかった。なんでこんなに顔が近いんだろう。良くないなぁとぼんやり思うだけ。

体も自由に動かず私に出来るのは口による抵抗のみだった。

やめてくれ、嫌いになりたくない、ずっと仲良くしてきたのに、こんなんで終わりになるの?信じてるからね。

「何を信じてるの?」

友情を。この長い長い友好関係を信じてるよ、だからやめてくれ。

酔いが覚めるまでの私は、自白剤を飲まされたかのように投げかけられた質問に全て答えていたし、ろくな抵抗が出来なかったので耳を齧られた。手は顔を覆っていた。それしか無かった。

カラオケを出てコンビニに向かい、水を2本飲み干した私はじわりじわりと酔いが覚めるまで友人の手に引かれながらゆっくり家に向かって歩いていた。自力では歩けなかった。

「どこかで休憩する?」

大丈夫、まっすぐ家に帰る、休まないと答えた。よくやった私。

ゆっくりゆっくり歩いて、ついに酔いが覚めきった瞬間、友人への怒りと友情の勝利の喜びと高まる自己肯定感に感情を揺さぶられた。

(もちろん私も悪かったけれど、友人はもっともっと悪いでしょう?)

家に着き、真っ先に耳を洗った。

耳を洗って、全て忘れて、何も無かったことにしたかった。

私にとっては友情が全てでこの大切な感情を破壊されたら溜まったものでは無い。

友人の行動は最低である。どこが水だよ、私も疑えよ。

持ち帰らなかった友人に感謝を。簡単に持ち帰れる場面だった。

私が流されない人間でよかった。抵抗し続けたからやめてくれた。

友人は酔っている間、なんだか色々と言っていたけれど「酔っている時とベッドでの言葉は信じるな」という教えに従って全てを偽りと断定した。

綺麗になった耳がまだ暖かい気がして、跡が残っている気がして、もう何もわからず眠った。

翌日目覚めて、飛ばなかった記憶が脳を破壊しそうだった。

友情の危機を免れた安心感、流されなかった自分への喜び、友人への怒りと抱かなくて良い感謝。

動揺が大きくて友人と電話をした。友人は全く気にしていなくてそういうものか、と思った。関係は変わらなかった。

「悪いのは俺じゃなくて、酒。俺たちは被害者。」

何言ってんの?脳味噌下半身野郎。とかなんとか言って元通り。無かったことにして過ごす日々。

「なぁ、またサシ飲みしようよ」

正気か?なんだお前、本当に最低だな。嫌だ、怖いからもう行かない。恋人に申し訳ないし。

「恋人なんていたの?!」

居ないけど、出来た時に友達とそんなことになる人間だと思われたら信用なくすじゃん。そろそろ恋人作ってみたいなって思ってんだよ。

「ふーん?俺は恋人が出来たら女とは全く会わないからなぁ」

なるほど、確かに今までもそうだったなと思った。数年音信不通になったことを思い出して寂しいと思った。暫く彼女作んないで。

「いいよ」

よし。

「ここがくっつくのは?」

あーあ、これだから、これだから!これだから!!さすが私の友人である。悪いやつだなと思いつつ、やるじゃんと思った。

以前から述べている通り私には恋愛感情が分からない。

束縛されるのも大嫌いだし、何より友情が大事なので友好関係を邪魔されるのをとてつもなく嫌う。友人のこと、人としては好きだけど恋愛感情はないよ。それでも?

全てを許すと言われて釣られないわけが無かった。

私なりに真剣に悩んで覚悟を決めた。付き合お。

「よろしく、頑張って好きになろうね」

よろしく、頑張るわ。これが友情の終わり……な訳もなく。

名目だけ変わったが実際の関係は余り変わらない。

そもそもお互いに恋愛感情があるのかも分からない。

私には恋愛感情が分からないので、友人に抱くのは先日までよりも強い友情でしかないのだが、それが許されているのだからきっとそれでいいんだろう。

友人にあるのは性欲だけなのかもしれない。都合の良い所にいた、異性の友人。手を出しても問題ない存在。

もしかしたらゲーム感覚かもしれない。恋愛シュミレーションゲーム。酔った私が言った気がする、そんなに言うなら惚れさせてみろ、と。良くなかったよな。

関係の名前以外に変わったところを挙げるならば、少し、いや思ったよりも友人が優しくなった。私のつまらない話を聞いてニコニコしている。

すぐに手を出す男だと思っていたがそうでもないらしく、明らかに不味い状態で逃がしてくれもした。

ただ、悪い男だからなぁ。お互い多分?あまり掴めず微妙な感覚で追いかけっこをしている。

会いたいと言われる度に、なるほどな、これが恋人関係ってやつか?と思ったり、いや多分好きなわけじゃないな、体目的ってやつ?と思ったり、ぼんやりと他人事のようである。

私は勿論友人のことが好きだが、残念なことに恋愛感情では無いので皆様が想像するような感情は味わって居ない。

恋愛を疑似体験させてもらっているような?

そうだな、一生味わえないと思っていた。ありがとう、友よ。

私に恋愛感情が芽生えてないことを知って、恋人関係になったことからも友人の軽さが伝わるだろうと思う。

皆様、分かってるならいいけど騙されないようにしてくださいね。最低だけど魅力的ですよ!友人としては最高ですしね!

謎の関係がいつまで続くのかは謎だが1ヶ月は持ちそうだ。どちらかが惚れ込んだら少しだけ形が変わるのかもしれないなとも思った。

恋人関係になってから女を断ち、その日何をしていたか連絡を寄越し、ラブホまで行ったのに(危機感の足りていない私が着いてってしまい、そういう雰囲気になってびっくりして拒否った)手を出さず私を家に帰したその姿勢になかなかやるなぁと思うのも事実。

ただ、私は友人が女好きなのを知っているので騙されはしないよ。ヤリモク野郎!

「ヤリモクだったらもう既に手出してるよ、紳士じゃん」

はいはい、紳士紳士、紳士は酒を水と言って渡さないから。じゃあな。

女慣れしてる友人を恋人と認識する日が来るのかは誰にも分からないが、私の思い出に残る体験であることは間違いない。

皆様方が楽しんでいるような恋愛は私には出来ないけれど、疑似体験だけ、もし叶うなら本当に恋に落ちてみたいと夢を見る。

友人相手が無理でも、これがきっかけで目覚めたら良い。別れても変わりなく友達に戻れると言ったよな、信じてるよ?

考えれば15年以上の付き合いだ。友好関係を築き始めたのはもう少し成長してからだったけど、小学校一年生の頃からの知り合いなんだから……縁が切れたら勿体ないよ?絶対裏切るなよ。

まずは一歩、歩み寄りの姿勢を。

仕方ないから耳くらい齧らせてやってもいい。

手洗いうがい、耳洗い。