あまがさの日記のようなもの

書きたい時に書く日記のようなブログです。

今週のお題「一生モノ」

現実世界の充実は私と文学を引き離す。

私は私を中心に見て外側と内側の世界に居場所がある。それの外側を現実世界、内側を思想・空想世界と呼び分けてみた。

現実世界に存在する人間と向き合う時間が増えると、思想世界にいる時間が減るというのは当たり前の話。両方に同時に存在することは難しく、一日は24時間しかない。仕方がないのはわかっていても自分に向き合う時間が減ると寂しいものがある。


何かについて考える時や絵を見たり描いたり文章を読んだり書いたりして空想の世界に迷い込んだ時、その世界をたった一人で歩く。

不明瞭で幻想的な私だけの世界が好きだ。私の内側の世界がたまらなく好きだ。

私の思考にあわせて太陽と月が廻る。霧を搔き分けて歩く日も、木漏れ日の中ボートを漕いで浮かぶ日も、嵐の中をずぶ濡れになりながら走った日も、雹が肌を切った日もあった。

空が溶けて雨となり、とろりとした思考の海に還る、廻る世界が大好きだった。


今も昔もこれからも何かを深く考えるとき、その海を泳ぐことに変わりはない。

でも私を構成する世界の比率が変化している。私は私が大好きなのに外に多く目を向けている。それを嫌だと思っていないのが怖い。

積んだ本を見て心が躍らないのは外側での疲労が蓄積しているからなのだろうか。内側に向ける体力が尽きてしまったのか?それとも興味のある分野に変化があり当時買った本への関心が薄れてしまったのだろうか。それともどれでもないのだろうか。

私が私として存在するためには私自身と向き合う時間も重要だと思っている。

心を豊かにするために必要な時間なことに間違いはないだろう。魅力的な私は内側から溢れる自信と確立した自我が作るものだとも思っている。私が大好きな私自身をそれらが作り上げたのだと思っている。


これほどまでに外の世界に干渉することが今までなかったからわからないのだ。現実を生きているように見せかけて、日常の半分は空想の中を生きていた。

現実とのかかわりはもちろんあった。人並み以上にあっただろう。だが外にあるもののほとんどを自分の内側に取り込んで一人で咀嚼して楽しんでいた。食後の感想は共有しても隣で味わうことはしていなかった気がする。

深い思考の海に沈む日が少なくなっている。

空想の世界で夢を見ようにも、外から差し込む光が心地よく朝を知らせてカーテンを開けてしまうのだ。私自身が自らカーテンを開けに起き上がっている事実が信じられないのだ。

朝という時間の区切りが名称でしかなかった学生時代はいつまでも瞼を閉じていられたのに。


どちらの方が良いのかと聞かれればきっと今の方が正しくて、良い。でも夜更かしをして朝の音を無視して月と太陽が目の前で踊る世界に沈む喜びも知っているのだ。

ここまで言葉を紡いで思うのは自分の好きなようにしたらいいじゃないか、というありきたりで私にとって一番正しい答えだ。

沈みたい日は沈めばいい。それまでは外に出て過ごせば良い。内側を開ける扉の鍵は私だけが持っていて、誰にも開けられないのだからあの世界はいつまでも私のものでしょう。

仮に様相が変わってもそれはそれで良いものだと思う。私は変化なき人間ではない。その時に抱いた思いが私の世界を構築する。きっとそれも気に入るだろう。

であるとするならば、今、私が積んだ本に目を向けなくても、数か月後の私は目を輝かせながら向き合っているのかもしれないし、そうでないかもしれないがそれはそれで気に入っているということだ。現実世界に多く目を向けることも間違いではないのだ。

思い返せば私の人生で後悔はしたことがなく、いつでも今が一番楽しい。悩む必要すらなかったのかもしれない。

なんていじらしく愛らしいのだろう。我が思考回路に愛しさまで感じる始末。少し入り込みすぎかもしれない。

気付いたことがある。自由時間の減少だ。これを考えずにこの話はするべきではなかった。

約20年、自分と向き合う時間がとても多かったという自覚がある。

友好関係も大切にしてきたとは思うが、時間配分でいうのなら学校:自分:他人で1:6:3だった。

現在は仕事:自分:他人で4:2:4だろうか?週5の労働が私の時間を大きく削っているらしい、それもそうか。

自由な時間が減ったことに加えて内側が少しのことでは揺らがなくなったから外側にも目が向けられるようになったのもあるかもしれない。

そうとらえると、私は今まで素晴らしい財産を築いてきたのだな。

誰にも奪われない最高の楽園を自分の中に構築し、20年経って外に飛び出した。鍵はこの手の中にある、私が心から望めばいつでも開かれる魅惑の世界。
そして私が今まで得た知識や能力、培ってきた感性が現実世界をも色鮮やかにする。

これは得難い、一生モノの財産だ。

生きてきてよかった。

今週のお題「一生モノ」